表装・表具というものを簡単に言うと、書画を傷まないように保存するものであり、
また、本紙すなわち書画を引き立たせる役割を果たしているということです。
(洋服や着物を人間に着させるように。)
まず本紙の内容や季節感、歴史性や雰囲気をつかみます。
とり合わせる裂も、織の種類や色・柄・風合など考慮し、
本紙のじゃまをすることなくいかに本紙が映えるかを考えて慎重に選びます。
もう一つの役割として室内空間の演出ということがあります。
室内全体に気を配りながら表装の形式や裂を取り合わせていきます。
あくまでも本紙を引き立たせるのが表具師の仕事です。
【本 紙】
表装する書画そのもののことです。縦長のものを竪物、横長のものを横物といいます。
材質は、絹・絖・紙の三種類があり、素材によって画幅あるいは本絹とも呼びます。
【一文字】
本紙の上下の横長の裂のことをいいます。上にあるものを上一文字、下にあるものを下一文字とも呼びます。
掛け軸の最も重要なポイントとなる部分で、金襴、銀欄などの上質の裂地を用います。
表装によっては、画幅の四方を囲んでいるものもあり一文字廻しとも呼ばれます。
また、一文字のない表装もあります。
【中回し】
中縁(ちゅうべり)、略して中(ちゅう)ともいい、一文字についで上等な裂を用います。
本紙の上の部分を中回しの上、下の部分を中回しの下ともいいます。また、本紙の左右の部分を柱といいます。
草の表装ですとこの柱の幅が狭くなっています。
【上 下】
中廻しの上下にあるもので、天地ともいいます。柱の部分に繋げてまわしたものを総縁といいます。
無地物を原則として使用しますが、柄物を使用する場合はあまり柄が目立たない渋めの物を用います。
【風 帯】
天の部分の幅を三等分した位置に、天の長さ分の裂をさげたものです。
驚燕(きょうえん)ともいい、ツバメを驚かすためのものです。中国の掛け軸には見られない日本独自のものです。